亡くなった親の土地を子どもが相続した際に、名義人を変更する手続きを「相続登記」と言います。国会で法改正があり、その相続登記が義務化されることが決まりました。義務化の中身や手続きの流れをまとめてみました。
01 今回の義務化に至った背景
全国でどのくらい所有者不明な土地があるか
民間有識者の研究会の16年の推計では、所有者不明の土地は全国で約410万ヘクタールにも上り、40年には北海道本島に匹敵する約720万ヘクタールに広がる計算です。この数字から、所有者不明土地問題の危機感が伝わってきます。
所有者不明土地とは、所有者が分かっても転居してしまって連絡先が分からないもの、土地の名義人が亡くなった後、登記されないままで相続人が多くなり、全ての人に連絡するのが困難になったものなどを指します。
相続登記を後回しにしているとどうなるか
当社にも相続の相談に来店される方はいますが、何年も前に亡くなったおじいちゃんの相続を今までしてなくて不動産を売却する時になって大変な作業が必要な方が実際におられます。(その時は相続人17名に増えてました)
「相続登記は、してなくても当面は困らないので、放置され続けてきた背景があります。ただ、その結果、相続人が増え続けることで、所有者不明土地が増加してきたのだと思います」
その結果
現段階では改正法の施行はされていませんが、政府が本格的に検討した結果、2024年(令和6年)4月1日より義務化される見込みとなりました。
令和3年4月21日「民法等の一部を改正する法律」(民法等一部改正法、令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法、令和3年法律第25号)が可決成立日しました。
02 義務化されたらどうなるか
改正不動産登記法においては、不動産の相続人に対し「相続が開始して所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければならない」と定められています。
つまり土地所有者が亡くなった際に亡くなった方の相続人は、取得を知ってから3年以内に相続登記することが必要になります。
知ってからというのは不動産の所有者が亡くなった場合に、亡くなったことを知らなかったり、亡くなったことは知っていても、その方が不動産を所有していることを知らない場合には、義務は発生しないということです。
もしやらなかったら(正当な理由なく)10万円以下の過料を払わないといけない可能性があります。
ちなみに所有権を持つ名義人の氏名や名称、住所に変更が生じた場合は、変更があった日から2年以内に申請しなければいけなくなります。
土地の所有者が転居を繰り返して所在が分からなくなることを防ぐのが狙いの一つです。この義務は5年以内に施行される予定です。(まだ施行日が決まってません)
これも知られてなくて不動産の現場ではよくあるのですが引っ越した時に登記簿謄本の住所変更登記をしてなくて前住所のまま放置されてる人が多いです。
03今回の義務化は、改正施工日(令和4年6月1日)前の相続にも適用されるのか
相続の発生が法律の施行前であるか後であるかを問わず適用されます。施行前の相続に適用できないと、相続登記が行われずに放置されている現状を解決できないからです。
したがって、現時点で不動産の相続人となっており名義変更をしていない方も、法律が施行されたら早めに相続登記しなければなりません。放置していると過料の制裁を課される可能性があります。
つまり施工日前に相続して相続登記をまだやってない人は
施工されてから3年以内の2027年4月1日までに相続登記をすればよいことになります。(知らなかった人は知ってから3年以内)
04相続人申告登記制度の中身(相続登記義務化の救済策)
改正不動産登記法では、「相続人申告登記」という制度が新しく作られました。これは、不動産を相続した人が法務局の登記官に対し「私が不動産の相続人です」と申し出て登記してもらう制度です。
何のために作られた制度かというと遺産分割協議が難航しているなどの事情により、相続登記が期限内に行うのが難しいケースもあります。そのようなときの救済策です。
そのあと協議がまとまって成立したら3年以内に相続登記を行わなければなりません。
05相続放棄すれば、義務はなくなります
不動産を相続したくない時もあるかと思います。そんな時は相続放棄も選択肢となります。相続放棄したら相続人ではなくなるので、相続登記義務化の規定は適用されません。
相続放棄は、相続人になったことを知ってから原則3ヶ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。
06相続等により取得した土地所有権の国庫帰属に関する法律
2021年4月に新しくできた法律で、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した人は、要件があるけど法務大臣の承認を受けて、主有権を手放して、国に帰属させることができる制度です。
次の10の項目にいずれにも該当していない土地である必要があります
①建物のある土地
②担保権(抵当権など)または用益権(地上権・永小作権など)が設定されている土地
③通路やそのほかの人による使用が予定されている土地として政令で定める土地が含まれている
④土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
⑥崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
⑦土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
⑧除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
⑨隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
⑩通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
上記の要件を満たしてなおかつ、審査が行われ、その際に審査の手数料がかかりますし、10年分の土地管理費などの費用も発生します。
原則、相続等により土地の所有権の全部・一部を取得したもの(建物は対象になりません) 購入した土地等は該当しません。
まとめ
今後3年以内に相続登記を義務化する法律が施行されます。現在相続登記していない人にもペナルティが課される可能性があるので、くれぐれも注意しましょう。
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